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NHK風車写真著作権侵害違反事件ニュース
著作権法解説【NHK風車写真著作権違反事件】
著作権違犯(盗用)した場合の刑事罰
懲役10年以下と罰金千万円以下の併科
著作権法第百十九条
法人にも罰金3億円以下の併科
著作権法第百二十四条
写真を単に泥棒した場合の刑事罰
懲役10年以下または罰金50万円以下
刑法第二百三十五条・窃盗罪
 著作権には、大まかに分けて二つの権利がある。テレビやインターネットなどの公衆送信権や出版権などの【著作・財産権】と、撮影者固有の同一性保持権や氏名表示権などの【著作者人格権】である。財産権の部分は権利譲渡可能だが、改変使用すれば著作者人格権をも侵害したことになる。

絵画や写真、ビデオやDVDなどの映像媒体やコンピュータソフト等の著作物を購入しても、所有権を取得できるが、著作権がそれらの所有者に移動する訳ではない。基本的なこれらの事項を知らなければ、プロとして成り立たない。小学生でも今日、他人の著作物を無断利用すると、違反になると承知している。まして、【見つからないように改変】など以ての外!

 著作物性の無い商品を、正面から単純撮影した商品カタログ写真などであれば、撮影者に著作権は発生しないので、取材時に複製撮影することも可能。商品写真の場合でも、照明や角度を工夫し、複数物をアレンジして創作性がある場合には、著作権が生じる。

 しかし、本事件の風景写真作品は、思想、感情などの想いが入って創作された著作物である。著作物である以上、プリント作品所有者に著作権が存在していないのは明らかだ。プロの取材者は、著作物を複製撮影するのであれば、著作権を確認し許諾を受けなければならない。まして、改変使用するのであれば、著作権者と著作者人格権(すなわち撮影者)の両方の許諾が必須条件となる。通常は、著作権者と著作者人格権者(著作物創作者)は同一だが、稀に、財産権の部分が販売譲渡されて、異なる場合もある。しかし、今回の事件では、それらの確認許諾は一切行われていない。日常的に著作物の権利処理を行う立場にあるプロが、極端なトリミングや色改変、静止画像を動画映像に改変している点など、故意犯罪を立証する捜査が行われている。

 一例だが、海外・テレビニュージーランド(日本のNHKのような存在)で、クリスマスのドキュメンタリー番組にて、ポストカード写真を使用したいと、事前に許諾を求める問合せがあった。許諾書類にサインし使用された番組では、最後のテロップに氏名表示もしっかりなされていて、日本のVHSで当該放送番組が見られる様にビデオも送られて来た。これが本来の姿である。

 日本でも、著作物を転用する場合、書類による許諾確認が新聞社を始め一般的に行われている。著作権を日々の業務として取り扱う個人や会社では、権利確認事項を正しく処理するのも、プロの仕事だ。これらの確認事項を怠れば、プロとしての業務遂行が出来なくなるばかりか、民事上の損害賠償責任を負い、故意に使用した場合には刑事上の責任も併せて負う結果となる。
親告罪刑事訴訟法第二百三十五条により、親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過するとできません。警察受理に一ヶ月程度必要ですので、大旨実質五ヶ月間と考えて行動を!)
 著作権侵害の罰則は、著作権法第百十九条にて、10年以下の懲役又は1000万円(法人の場合3億円以下)の罰金または両方に処される。平成18年法案可決・同19年施行で、それまでの5年以下の懲役又は500万円(法人の場合1億5千万円以下)が、倍になって、泥棒と同じ懲役年数に改正された。また、罰金は、お金の無い泥棒よりもはるかに高額で厳しい内容に変更されている。公訴時効7年間。

別途、民事でも差止請求や損害賠償が請求される。
参照リンク:著作権法(総務省)

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
民法第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
※著作権侵害は、故意過失を問わず、使用された時点で自動的に成立する。一般の権利侵害と異なり、無過失でも、法律上の正当な定めによらなければ侵害となる。



ワンポイント・アドバイス※弁護士に相談する場合は、著作権法に詳しいか否か確認してから!

2008年12月12日 写真家 縄田頼信
2010年10月10日 更新
 
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