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赤間硯の歴史は古く、健久2年(1191年)に鶴岡八幡宮に奉納された御物に赤間硯がある。源頼朝に由来する平安時代から、永遠と800年以上に渡り造り続けられている。 |
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明治時代初期~中期、厚狭周辺及び下関(小月周辺)には、赤間硯職人が200~300名存在していた。文書を書き記す手段として、書道が広く多用されていた時代で、赤間硯の長年の歴史の中でも一番生産が盛んだった。 稀に、戦前の古い赤間硯に関するお問合せを頂きますが、明治時代の硯職人資料などは存在しませんので、当時の赤間硯職人に関して、今となっては、確認しようがありません。 |
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赤間硯の原石は、輝緑凝灰岩に属する赤間石で、山口県宇部市の北部(楠町・2004年11月1日廃地合併)万倉岩滝(まぐら・いわたき)の奥地で採掘される。原石を、紫金石〔山陽小野田市・旧山陽町森広原産(見た目は赤間硯の石色と似ているが、鋒鋩が少なくつるつるしているので硯には不向き。花台としては最適。)〕や、赤色性頁岩と表示している媒体も見受けられる。其々、輝緑凝灰岩とは石の硬度や粘り、鋒鋩(ほうぼう・石が有する棘の様な物)の少ない点など、性質の異なる石である。 赤間硯の坑道は、山奥の急斜面に約15度の斜坑を掘り、落盤防止や水中ポンプによる排水と発破及びカンテラの灯りを頼りに行われる。私の父は、春と秋の年2回・1ヶ月間ずつ採掘を行っていたが、さながらミニ炭鉱の様であった。 |
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私の祖父や父も硯職人であったが、その昔から硯職人が直接小売することは殆ど無く、多くは仲買の問屋にて最終仕上げ箱容れがなされ、関東・関西方面への書道具専門店や文具店百貨店などに流通していた。 約20~50年程前まで、粉をプレス機で固め焼き入れした人造硯が、学童用として普及していた。砥石と同程度に軟らかいため、墨を磨れば硯も擦れて溝となる有様である。墨汁を用いる分には良いが、墨との相性は悪い。近年、中が空洞となっているプラスチック素材硯が、学童用の主流となっている。非常に軽く、左手でしっかり押さえておかないと、墨をすることはできない。墨をする行為は、精神を集中する時でもある。それらは割愛され、墨汁を重用しての変則書道授業が行われている。 |
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伝統工芸品の多くが後継者不足となっている様に、赤間硯も例外では無い。現在では万倉3軒・下関2軒を有するまでに減少している。採掘する期間は無収入で、多くの手間や費用が掛かる割りには収入が少なく、景気に左右される美術工芸品故、後継者が育ちづらい。 昭和52年、旧・通産省時代に、伝統工芸品・伝統工芸士として国から認定された。この伝統工芸品認定に先立ち昭和51年、赤間硯生産協同組合は発足した。硯の伝統工芸品認定は、山口県の赤間硯と、宮城県の雄勝硯の2件のみである。 |
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赤間硯の石色は主に赤茶色で、赤紫と青色を染め分けたものも時々ある。硬度はほぼ同じで青色だけというのは殆ど存在しない。漆や代用漆で仕上げてあるため光沢を帯びているが、墨を磨る部分は生地抜きが施され、原石そのままの色となっている。 尚、生地抜きが行われていない場合は、墨を磨る部分に水ペーパー180番で水を付けながら、光沢部分を擦り落とし使用すると良い。尚、全ての硯石共通にベストな鋒鋩を求めるなら、下記掲載の【天然硯砥石(鋒鋩目立て用)】などを用いると良い。 |
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赤間硯は独特の色と共に、小さく一定した鋒鋩(ほうぼう)が多くあるため下墨・発墨が良く、粘り強度に優れているため高浮かし・透かし彫りなどの彫刻加工に適している。 |
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硯と云えば中国の端溪硯(たんけい・すずり)が有名であるが、石質の安定している古端溪(こたんけい)は現在では殆ど流通していない。多数流通している新端溪硯石の特徴は、 ① しんたんけい・すずりいし/10個に1個の割合で古端溪に近い石質。 ② 1個の硯石の中に、固い部分や柔らかい部分などの硬度違い部分が多数存在する。 ③ 赤間硯と比較すると、鋒鋩は多数あるが、粘り強度は弱いので、彫刻には不向き。 古端溪硯の彫刻修復や、新端渓硯の作成を手掛けていたので、特徴を理解していた。 硬度ムラが多数あるので、製作には高度な技術が硯職人に要求される。 |
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赤間硯石は端渓硯石に比較して、粘り強度は数段に優れ、彫刻加工に適している。 赤間硯の鋒鋩は、新端溪硯に比べ小さいため、煤(すす)粒子の粗い松煙墨や膠(にかわ)の少ない油煙墨との相性が良い。墨汁と比較にならない程の、文字に伸びの良さがあり、墨絵や仮名文字、なかでも写経には最適である。 逆に煤粒子の細かい墨や膠分量の多い墨では、時間の割りに墨が思うほど磨れない結果となり、特大筆(両手持)で大量に使用する用途には不向きである。 |
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赤間硯の特徴は、赤茶色の独特な色と、原石が有する細工加工性による美術彫刻とが相まって、実用的でありながらも鑑賞的要素を兼ね備えている点にある。 |
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宇部市等の補助金を得て、2016年、地域団体商標「赤硯硯」が特許庁に登録が為され、この商標登録に伴い、今まで各種辞書に掲載されていた「赤間硯」の項目が、2017年発行の電子辞書では項目消えとなっている。原石名称「赤間石(あかまいし)」の項目は存在している。 |
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2005年3月24日 旧・山陽町合併のため加筆 2006年11月13日 明治時代 を加筆 2007年7月23日 端渓硯石の特徴 を加筆 2008年10月30日 プラスチック硯 を加筆 2017年9月10日 地域団体商標登録に伴い広辞苑から「赤間硯」が消える。 を加筆 |
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